患者さんから睡眠について相談された時に使う資料

2021年5月26日

スリープファーマシスト のまっちゃんです。

今回は調剤薬局で働いているとよくある質問
「最近なかなか眠れないのだけどどうしたらイイですか?」
の質問に対して薬剤師がどう対応していくか。

(用いる資料編)についてです。


私も薬剤師になりたての時は具体的な案を
口頭で話していましたが、
患者さんが家に帰ってからどれだけ覚えて実践できるかは
不確かな所がありました。

次に来た時も「そんなに変わっていないね〜」
という声を聞くこともしばしば。


そこで、
患者さんと一緒に資料を見ながら
良い方法を提案できればなと思い、
調べているとすごくまとまっている資料がありました。


その名も

「睡眠障害対処 12の指針」
参考文献:睡眠障害の対応と治療のガイドライン

※この資料の睡眠障害という言葉は
「不眠」「睡眠の問題」「睡眠関連疾患」を含んでおり
紛らわしいものとなっております。
本来は睡眠障害という言葉は使わず、上の3つのどれかを使いますが、メーカーさんの資料と同じ名称で記載しておりますのでご了承下さい。


田辺三菱製薬さんと吉富薬品さんが提供している
WEBサイトスイミンネットというサイトに
A4用紙1枚にまとまったものがありました。

ぜひこちらのpdfをPCに保存して
睡眠で悩んでいる患者さんがいた際は
こちらを使って話をしてみてはいかがでしょうか。

          ↓

https://www.suimin.net/data/images/guide/guide.pdf

ここで終わったら他のサイトの紹介で終わってしまうので
ここからは「睡眠障害対処 12の指針」の解説をしていきます。

pdfを見ながら理解を深めて頂ければ幸いです。


睡眠時間は人それぞれ、
日中の眠気で困らなければ十分

  • 睡眠の長い人、短い人、季節でも変化、
    8時間にこだわらない

  • 歳をとると必要な睡眠時間は短くなる


睡眠の長い人、短い人、季節でも変化
8時間にこだわらない

睡眠時間と言えば思い出すのですが、
学生時代の私は睡眠時間を極限まで減らして
思いっきり遊んで・バイトしまくろう!!

なんて無茶苦茶な生活をしようとしていましたが、
そのせいかよく風邪を引いていた気がします。笑

今思えば当然なのですが、
ショートスリーパー、ロングスリーパーというのは
遺伝で決まっているので
僕がどれだけ努力をしてもショートスリーパーにはなれません。

アメリカで1日4時間の睡眠しか必要としていない
とある家族の遺伝子情報を調べたところ、
DEC2という遺伝子の突然変異が確認されました。

この遺伝子は通常の睡眠時間の人には
確認されなかったそうです。

このような事から睡眠時間は人それぞれなので、
無理せず自分にあった睡眠時間を探していくよう
指導していきましょう。


歳をとると必要な睡眠時間は短くなる

次に年代別の必要な睡眠時間ですが、
加齢と共に必要な睡眠時間は変化していきます。

上の図は年齢別による総睡眠時間、
レム睡眠、ノンレム睡眠、覚醒時間を示しております。

患者さんの話からも実感があると思いますが、
加齢とともに総睡眠時間・レム睡眠の割合が
減る傾向
があります。


また、米国睡眠医学会と睡眠研究学会は数千本の論文を元に
以下のように答えています。

18〜60歳の人が健康を維持するには

「一晩少なくとも7時間の睡眠が不可欠だ」
と発表しております。

必要な睡眠時間は年齢によっても異なります。

 

生後0〜3ヶ月      14〜17時間

生後4〜11ヶ月 12〜15時間

1〜2歳          11〜14時間

3〜5歳          10〜13時間

6〜13歳       9〜11時間

14〜17歳      8〜10時間

18〜64歳      7〜9時間

65歳以上       7〜8時間

 


上記の睡眠時間はあくまでも目安であり、
日中しっかり覚醒して過ごせるかを睡眠充足の目安として、
睡眠時間にこだわらないように指導しましょう。


また、「昔のように眠れない」と訴える患者さんには
加齢とともに睡眠時間が減っていくことを
しっかりと伝えましょう。

更には季節でも睡眠時間は変動します。

秋から冬にかけ、日長時間が短くなるにつれ活動性の低下などと共に睡眠時間も長くなります。

逆に、春から夏にかけては睡眠時間が短くなる傾向があります。



刺激物を避け、
寝る前には自分なりのリラックス法

  • 就寝前4時間のカフェイン摂取、就寝前1時間の喫煙は避ける

  • 軽い読書、音楽、ぬるめの入浴、香り、筋弛緩トレーニン


就寝前4時間のカフェイン摂取、
就寝前1時間の喫煙は避ける

眠る前には覚醒するような刺激物は避けて、
リラックスする事で眠りにつきやすくなります。

従って、覚醒物質であるカフェインの摂取、喫煙は
控えるよう説明しましょう。

カフェインは空腹時、飲んで45分後には99%吸収さます。

そして1〜2時間後に最も覚醒作用が現れ、
4〜5時間まで持続する
のが以上に書かれている理由です。

ただ、カフェインの効く時間も目安であり、
飲むときの温度などでも変わってきます。

患者さんには夕食後以降のカフェインは控えるように
説明しても良いかと思います。


軽い読書、音楽、ぬるめの入浴、
香り、筋弛緩トレーニン

次に寝る前のリラックス方法ですが、

こちらは患者さんがリラックスできる方法を一緒に探していきましょう。

多くのリラックス方法が推奨されていますが、
いずれも直接的に睡眠を誘う効果は無く、
入眠を妨げる要因を減らす事への間接的効果
にすぎないと言われています。

ただ、テレビやPC、携帯電話を見る事は覚醒につながるので避けていただきたいですね。



薬剤師が教える寒い時期の快眠方法
薬剤師が教える寒い時期の快眠方法
快適な睡眠を得るためには睡眠環境を整える事が重要です。温湿度、光、音は睡眠に影響を及ぼしその中でも温湿度がかなり影響を及ぼします。 まだまだ寒い時期が続いていま.....

眠たくなってから床に就く、
就床時刻にこだわりすぎない

眠ろうとする意気込みが頭を冴えさせ寝つきを悪くする


時々、
「なかなか寝付けなくて2時間くらい布団の中で眠れないです」
と訴えている患者さんに話を聞くと
「8時〜9時にはお布団に入っています」
という患者さんがいます。

このような方は寝付きの悪さが睡眠への満足感の低下に繋がっているので、
就寝時間にこだわり過ぎず、
眠たくなってから床に就くよう説明してはいかがでしょうか

睡眠には24時間の体内時計だけでは説明できない眠気の山と谷があると言われております。

「◯◯さんは、もしかしたら眠気の谷(睡眠禁止ゾーン)の時間に眠ろうとしているから寝付きが悪いのかもしれないですね」

と説明するとご理解いただけるかもしれません。

この眠気の谷(睡眠禁止ゾーン)は普段0時に眠る人の場合、
20時〜22時と言われており、

習慣的入眠時刻の2〜4時間前の時間帯は1日の中で最も寝付きにくい事が分かっております。

朝方・夜型の方は前後しますので睡眠禁止ゾーンがあり普段寝る時間の2〜4時間前には寝付きにくいという情報をしっかり説明してあげましょう。



同じ時刻に毎日起床

  • 早寝早起きでなく、早起きが早寝に通じる

  • 日曜に遅くまで床で過ごすと、月曜の朝がつらくなる


「休みの日はいつも寝溜めするため10時頃まで寝ています」
という忙しいビジネスマンは多いかと思います。

ただ土日の寝溜めが体内時計をズラす原因となり、
月曜の朝起きることが辛くなります。

いわゆるブルーマンデーというものです。

平日は忙しく休みに寝溜めしている患者さんに対しては
休みの日でも普段起きている時間から2時間以上のズレがないように指導していくことが第一にやっていくことではないでしょうか。



光の利用でよい睡眠

  • 目が覚めたら日光を取り入れ、体内時計をスイッチオン

  • 夜は明るすぎない照明を


目が覚めたら日光を取り入れ、
体内時計をスイッチオン

光は睡眠の治療をしていくには非常に重要な要因と言えます。

皆さんもご存知かと思いますが、
人間の体内時計は24時間よりも少し長いことが知られています。

このズレを解消する最も重要なものが朝の太陽の光となります。

この他にも後ほど出てくる睡眠ホルモンのメラトニンは朝太陽の光を浴びてから14時間後に分泌が盛んとなりますので、
ホルモン的な影響からも光を浴びる事は大切となります。

特に朝の目覚めが悪い人は朝起きると同時に
積極的に太陽の光を浴びて体内時計のスイッチを入れましょう

また、曇りや雨の日でも外の光は室内光よりも明るい
(曇りの日でも室内の5〜10倍の明るさ)
と言われていますので、
外に出て背伸びをすれば良い1日を迎えられるでしょう。

睡眠関連ホルモン まとめ
睡眠関連ホルモン まとめ
今回は睡眠に関係する大切な3つのホルモンについてまとめていきます。 薬剤師のあなたなら知っているホルモンばかりだと思いますが、それぞれのホルモンが睡眠に与える影.....


夜は明るすぎない照明を

次に、夜の光についての注意点です。

夜にはメラトニンという睡眠ホルモンが分泌される事で眠気が出てきますが、
光によってこのメラトニンの分泌が妨げられます。

特にブルーライトという青白光がメラトニン分泌を妨げます。

このことから寝る時間が近づいていくに従って、
室内の光を青白光から暖色(オレンジ色)の光に変える
ことや、
徐々に室内を暗くするとメラトニン分泌が盛んになりスムーズな寝付きに繋がります

また、ブルーライトを避けるのは室内光だけではなく、
寝る前の携帯やPC、TVを避けることも
非常に大切となります。

寝付きの悪い患者さんへは夜携帯を見る代わりに違う習慣をするようにアドバイスしましょう。



規則正しい3度の食事、規則的な運動習慣

  • 朝食は心と体の目覚めに重要、夜食はごく軽く

  • 運動習慣は熟睡を促進


朝食は心と体の目覚めに重要、
夜食はごく軽く

朝食について

私たち薬剤師は血糖値が高い方へ規則正しい3度の食事のアドバイスをすることもあると思いますが、

睡眠の質を高めるためにも3度の食事をすすめることが大切となります。

1つ目の要因として規則正しく朝食をとっていると、
朝食の1時間ほど前から消化器系の活動が活発になり、朝の目覚めを促進します。

2つ目の要因として先ほど出てきたメラトニンという成分がトリプトファンというアミノ酸を元にセロトニンを介して生成されます。

このことから「朝食もしっかり食べているよ!」
という患者さんには
「朝食をパンで済ましてないですか?」や
「朝タンパク質を摂っていますか?」
というような一歩踏み込んだ質問をしてみましょう。


夜食について

次に夜の食事についてです。

夜の食事に関していうと食べ過ぎは良くないと皆さんご理解いただいていると思います。

良く言われているのは寝る3時間前には夕食を済ませましょうと言いますが、
実は夜食を食べて空腹感を和らげることは良い睡眠をサポートすると最近言われてきました。

なぜ夜食を食べても良いかというと

1つは空腹時にグレリンというホルモンが分泌され、このホルモンには覚醒作用があるという理由から。

2つ目はピッツバーグ大学のメディカルセンターの睡眠センター(UPMC)から
寝る前の軽食で血糖値が安定すれば、眠れない原因となる低血糖が解消されるとコメントをしています。

UPMCによるとメニューの選び方としては
少量のタンパク質と適度な脂質を含む食べ物で200kcal未満のものと考えられています。

また、当然ですが消化に良いものが適しています。


さて、具体的にどんな食べ物が良いでしょうか。

例えば

  • 砂糖の多く含まれていないヨーグルト
  • バナナ

は手ごろに食べられる夜食ではないでしょうか。

また、味噌汁をオススメしているドクターもいらっしゃいます。(佐藤けいこ書 寝るだけダイエットから引用)

どうしても夜食が食べたくなるという患者さんには
上のものをオススメしてみてはいかがでしょうか。


運動習慣は熟睡を促進

また、昼間の運動に関しては睡眠の質を改善する事が分かっています。

運動の内容は30分程度の散歩・ランニング・水泳・ストレッチなど軽く汗ばむ程度で良いとされています。

寝る前の激しい運動は交感神経を活性化させてしまうので注意しましょう。



昼寝をするなら、15時前の20〜30分

  • 長い昼寝はかえってぼんやりのもと

  • 夕方以降の昼寝は夜の睡眠に悪影


最近では大手の会社でも昼寝を取り入れることで、
昼からの仕事の生産性を高める意味でも昼寝を取り入れる流れができつつあります。

ただ、30分以上の昼寝は深い眠りになり寝起きがぼっーとして最悪というのも経験した方も多いのではないでしょうか?

従って高齢者でも30分以内に抑えることが良いと言われております。

また、夕方以降の昼寝?夕寝?
をしてしまうと夜の寝付きに影響が出ますので
昼寝をするなら15時までにと指導しましょう。



眠りが浅いときは、
むしろ積極的に遅寝・早起きに

寝床で長く過ごしすぎると熟睡感が減る


寝付きが悪く、眠りが浅いと感じる方には
睡眠日誌をとることがあるのですが、
このような方は寝付きに1、2時間かかっており、
不眠を自覚し睡眠への満足感が低下していることがあります。

このような方には

むしろ遅寝・早起きにして就床時間を減らす睡眠制限療法がすすめられます。

その時に活用するのが睡眠日誌となりますので以下の記事を参考にして下さい。

患者さんの睡眠を把握する 睡眠日誌とは?
患者さんの睡眠を把握する 睡眠日誌とは?
薬剤師として働いている皆さんは眠剤を服用されている患者さんから 「あんまり眠れていないな」という話を聞くとどのように考えますか? とっさに、眠れるポイントをお伝.....

→睡眠制限療法についてはこちら



睡眠中の激しいイビキ・呼吸停止や
足のぴくつき・むずむず感は要注意

背景に睡眠の病気、専門治療が必要


睡眠中の激しいイビキ・呼吸停止に関してはSAS(睡眠時無呼吸症候群)を疑う必要があります。

また、足のぴくつき・むずむず感に関しては
レストレスレッグス症候群(むずむず脚症候群)
を疑う必要がありますので、
専門の医療機関へ紹介する事が必要となります。

→SAS(睡眠時無呼吸症候群)についてはこちら

→レストレスレッグス症候群(むずむず脚症候群)についてはこちら



十分眠っても日中の眠気が
強い時は専門家に

  • 長時間眠っても日中の睡眠で仕事・学業に支障がある場合は専門医に相談

  • 車の運転に注意


長時間眠っても日中に影響がある場合は、
ナルコレプシーに代表される過眠症という病気が隠れている可能性があります。

このような患者さんは専門の医療機関へ繋ぐ事が私たちの役割となってきます。

→ナルコレプシーについてはこちら



睡眠薬代わりの寝酒は不眠のもと

睡眠薬代わりの寝酒は、深い睡眠を減らし、
夜中に目覚める原因となる


日本は睡眠薬の代わりに寝酒をする人の割合が非常に多い国です。

確かにお酒の鎮静作用により眠たくなりますが、
アルコールから分解された時にできるアセトアルデヒドは覚醒作用があるので中途覚醒が多くなり睡眠の質が下がります。

日本人24,686人を対象として行われた調査では、
男性の48.3%、女性の18.3%が1週間に1回以上寝酒をしていました。

このデータからも日本には寝酒に関する理解が弱い状況にありますので、
寝酒が睡眠薬の代わりにはならない事をしっかりと情報提供していきましょう。



睡眠薬は医師の指示で正しく使えば安全

  • 一定時刻に服用し就寝

  • アルコールとの併用をしない


睡眠薬服用の注意点としては、服用後およそ30分で床につく事を説明しましょう。

また、睡眠薬はアルコールと一緒に飲むと催眠作用が増強してしまう事は薬剤師の皆さんなら周知の事実かと思います。

問診票にお酒を毎日飲む方で睡眠薬が処方されているケースは必ず確認が必要となるでしょう。



まとめ

いかがでしたでしょうか?

患者さんの状況や悩み、提案できる事は人それぞれです。

睡眠障害対処 12の指針は患者さんと
「これなら私でもできるかも。これはちょっとできないかな。」
と一緒に睡眠について考えることができるツールとなっております。

睡眠について悩んでいる患者さんが思い浮かんだあなたは
まず「12の指針」を印刷してみましょう。

https://www.suimin.net/data/images/guide/guide.pdf

そして、睡眠で困っている方に12の指針をもとに改善案を一緒に考えていくことで睡眠の事でも頼りにされる薬剤師を目指していきましょう。

睡眠衛生指導 ポイントとコツ
睡眠衛生指導 ポイントとコツ
スリープファーマシスト のまっちゃんです。 「なかなか眠れなくて困っている」という患者さんへ 睡眠障害対処12の指針を試されましたでしょうか? →まだ睡眠障害対.....

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