睡眠衛生指導 ポイントとコツ

2021年5月26日

スリープファーマシスト のまっちゃんです。

「なかなか眠れなくて困っている」という患者さんへ
睡眠障害対処12の指針を試されましたでしょうか?

まだ睡眠障害対処12の指針を見たことのない方はこちら

12の指針を患者さんと一緒に見ながらお話したけど、
次に来た時には特に変わっていないと感じられた方へ
その活用のポイントとコツについて紹介していきます。

この記事を書くヒントとなったのが
2019年日本睡眠学会で講演をされていた岡島義先生の発表です。

今回は臨床心理士の岡島先生のお話をもとに書かせて頂きました。

患者さんの気持ち

睡眠に困っている患者さんに睡眠障害対処12の指針を用いてアドバイスをすると患者さんから

「いい話を聞いたな。」
「薬剤師さんに相談してよかったな。」

と感じてもらえると思います。

ただ、次回来た時に
12の指針を試したか聞いてみると

「なかなか忙しくてできなかった」
「ついつい普段の生活に戻ってしまった」

なんて声が時々返ってくるのではないでしょうか。

このような患者さんを想像すると

  • 「いいこと聞いたけど、いつもの習慣を変えるのは面倒くさい、辛い」
  • 「とりあえず睡眠薬を飲んでいると眠れているからそのままでいいか」
  • 「どの項目から試したらいいか分からない」

というような心の声が聞こえてくるような気がします。

私もすごく分かるのですが、
自分の習慣、考えを変えるのって

とにかく


しんどい!!

面倒くさい!!


そんな時に活用できるのが認知行動療法です!!

認知行動療法とは?

認知行動療法を簡単に説明すると
「習慣をいかに直すか」がポイントとなってきます。

ここでいう習慣とは生活習慣はもちろんですが、
日常の振る舞い方や考え方の習慣も含んでおります

考え方の習慣でいうと
例えば

寝る前に「今日もなかなか眠れないかもしれないな」
と考える事が習慣化している患者さんは
無意識に覚醒状態を作り出しているかもしれません。

また、ベッドに入ってから時計をよく見てしまう習慣の患者さんは
「もうこんな時間、早く寝ないと」
という焦りから余計に眠れない状態になります。

このように身についてしまった習慣(クセ)を一から見直して
よく眠れる習慣を身につけていく事
が認知行動療法の基本的方法です。

認知行動療法による不眠の改善率

カナダのラヴァル大学の研究では、
認知行動療法の介入により症状が改善・減少する人が70〜80%

不眠症の診断基準から完治する人が50%とかなり高い効果が出ております。

また、認知行動療法の良いところは習慣(クセ)を見直すので
治療終了後少なくとも6ヶ月間は効果が持続したという結果が出ております。

(C M Morin et al : Nonpharmacologic treatment of chronic insomnia. An American Academy of Sleep Medicine review.)

認知行動療法のステップ

薬を使わずに習慣を変えていく認知行動療法の効果はご理解頂けたかと思います。

では次に認知行動療法の進め方についてです。

流れとしては3つのステップです。

  • ゴールを決める
  • 自分の睡眠状態について気付いていただく
  • 日常生活や振る舞い方、考え方などの睡眠習慣で良くない習慣を良いものに変えていく
  • その試してみた習慣が良かったか判断して、パターンが習慣化するまで続けるか別の方法を考える

ゴールを決める

今働いている会社の社長からよく指導していただいているのですが、

「◯◯なんだけど、なんとなくノリでやっていない?」

と鋭い指導してもらうことがよくあります。

僕も最近やっとゴールを決めて行動する意識をつけておりますが、
何となくやると無駄も多いし、続かない事が多いものです。

そこで睡眠指導でもゴールからの逆算思考で実践してもらえたらと思います。

ここでのポイントが
ゴールをどこに持っていくか決めるのは薬剤師ではなく

患者さん本人の希望や満足感を基準とすることです。

例えば
現在寝付きに2時間かかっている患者さんに

「30分で眠れるようになりたいです」と患者さんから希望があれば

それを最終の目標にして、

「まずはじめは1時間で眠れる日を週に3回にしましょう。」

なんて風に目標を細切れにしていくことも継続するポイントです。

自分の睡眠状態について気付いていただく

まず自分の睡眠状態、習慣について気付いていただくためには
睡眠日誌を使っていくのが良いでしょう。

患者さんの睡眠を把握する 睡眠日誌とは?
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薬剤師として働いている皆さんは眠剤を服用されている患者さんから 「あんまり眠れていないな」という話を聞くとどのように考えますか? とっさに、眠れるポイントをお伝.....



日常生活や振る舞い方、考え方などの睡眠習慣で良くない習慣を良いものに変えていく

良くない習慣をしているか気付いていただくには
睡眠障害対処12の指針を使っていくのが良いでしょう。

患者さんから睡眠について相談された時に使う資料
患者さんから睡眠について相談された時に使う資料
スリープファーマシスト のまっちゃんです。 今回は調剤薬局で働いているとよくある質問「最近なかなか眠れないのだけどどうしたらイイですか?」 の質問に対して薬剤師.....


その試してみた習慣が良かったか判断して、パターンが習慣化するまで続けるか別の方法を考える

元企業にいたまっちゃんは

この②〜④の流れをみるとPDCAサイクルにすごく似ているな〜

と感じてしまいました。

余談ですがPDCAサイクルを簡単にいうと
Plan(計画)→Do(実行)→Check(評価)→Action(改善)を繰り返して業務を改善していく手法です。

睡眠の認知行動療法は習慣(クセ)を治していくので
眠剤のようにすぐには効果が出ません

①〜④を繰り返し続ける事で習慣を変えていきますので

患者さんにはこのことを理解いただき、継続して睡眠を改善していって欲しいと思います。

認知行動療法のポイント

最後に認知行動療法をより効果的にする4つのポイントについてお話しします。

問題の維持要因を理解する

認知行動療法においてエビデンスをそのまま教えても行動につながるとは限りません。

なぜ改善につながらない行動を続けているのかを考える必要があります。

例えば、
「布団に入ってから2時間くらい寝付けない」
と訴える患者さんがいたとします。

よくよく話を聞いてみると

「眠れなくて心配だし、お布団に入っていると体が休まるような気がするから
毎日9時にはお布団に入っております。」

なんて話はこのブログを読んでいるあなたには経験があるのではないでしょうか。

この場合、短期的に見れば早く布団に入る事で心理的には楽になるでしょう。

しかし、
長期的に見れば毎日すぐ寝付けないので睡眠の満足度は低下し、
この患者さんの睡眠の悩みが改善されることは難しくなるでしょう。

このようにすぐに得られる満足だけでなく、
長期的にみた満足を患者さんと一緒に考えていく必要があります。

患者さんにもこのことを理解していただき、
辛いかもしれませんが1、2週間は新しい習慣を続けていくよう勇気付けをしていってもらえればと思います。

マイナスの変化だけでなく、プラスの変化に注目

特に日本人は出来ないことに注目してしまいがちですが、

プラスの変化に対してぜひ上手に声がけをしてあげてください。

以下の4つの声がけポイントを記しますので参考にして下さい。

・適切な行動をしたら、すかさず褒める

・適切な行動が良く出るようになったら、時々褒める

・適切な行動が思い出せない時は、ヒントを出す。
 ex) 「その時はどうするのでした?」

・褒め言葉はたくさん用意しておく。
 ex) 「頑張りましたね」「すごいですね」
「実践していただいてありがとうございます。」
などなど

複数の選択肢を提案する

言われたからやる状態より
自分で選んでやる状態の方が行動する力は強いです。

僕も昔よくあったのですが親から「勉強しなさい!!」と言われれば
「今からやろうと思っていたのに。もうやる気なくなった。」
 なんてやり取りをした記憶が思い出されます。

睡眠指導でも同様に「この習慣を変えましょう!!」よりも

「どれなら出来そうですか?」とご自身で変える習慣を選んでもらう事で

自発的な行動を促していきましょう。

具体的なイメージがわくホームワーク課題をだす

複数の選択肢の中からできるものを選んでもらいましたら
具体的にホームワークを出しましょう。

ホームワークを出す事で患者さんにある程度の強制力が働きます。

例えば
「毎日お風呂へ浸かるようにします。」

と習慣を変えようとしている患者さんへは

「寝る2時間前くらいを意識して41℃以下のぬる目のお湯に浸かりましょう。」

と具体的にアドバイスをすることで行動にもつながります。

少しでも分からない事があると行動に繋がりにくいので
具体的というのを意識してホームワークを出しましょう。

まとめ

ここまで読んでいただいて認知行動療法の効果や方法をご理解いただけたかと思います。

認知行動療法は患者さんとの話し合いで
より良い方法を一緒に探して実践していく方法です。

なので頑固な人やホームワークをしてこない人には効果が薄いですが、

神経質な性格が原因で睡眠に満足がいっていない人には試してみる価値がある方法となります。

・睡眠薬を飲んでいなくても睡眠に満足していない

・睡眠薬を長期的に飲んでいる

・睡眠薬を飲んでいるが効果を実感していない

と訴えている患者さんの指導に認知行動療法を活用していただき

一人でも満足のいく睡眠をゲットして睡眠薬に頼らない生活を送って頂ければ幸いです。

今回学びをいただいた岡島先生が執筆された書籍も紹介しますので
興味のある方はぜひ勉強してみてはいかがでしょうか?

疑問点や実践してどうだったなどの声がありましたら、

ぜひお問い合わせページよりコメント頂ければと嬉しいです。